肩関節周囲炎とは
肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)、一般的には「五十肩」として知られています。これは肩関節周囲の組織が炎症を起こし、痛みや運動制限を引き起こす状態です。この病気の特徴や原因、治療方法について詳しく説明します。
肩関節周囲炎の特徴
1.痛み
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- 初期の痛み: 肩の前面や外側に鋭い痛みが現れることが多いです。特に夜間や休息時に痛みが強くなることがあり、睡眠を妨げることもあります。
- 慢性的な痛み: 痛みは徐々に持続的な鈍痛に変わることがあり、日常生活の動作(例:髪を洗う、シャツを着る)にも影響を及ぼすことがあります。
2.運動制限
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- 肩の可動域の減少: 肩を前方に上げる(屈曲)、側方に上げる(外転)、および後方に回す(外旋)動作が特に制限されます。
- 凍結肩: 重症の場合、肩が「凍結」し、ほとんど動かせなくなる状態(フローズンショルダー)に至ることもあります。
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3.肩の硬直
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- 硬直感: 炎症が続くと、肩関節周囲の組織が硬くなり、動かそうとするたびに硬直感や引きつる感じが生じます。
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4.触れると痛い
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- 触診時の痛み: 肩を軽く押したり触れたりすると痛みが増すことがあります。特に肩の前方や側面に痛みが集中することが多いです。
5.日常生活の影響
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- 動作の困難: 髪をとかす、背中に手を回す、物を持ち上げるなどの日常の簡単な動作が困難になることがあります。
肩関節周囲炎の経過
1.急性期(痛みの増加)
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- 痛みが急速に増し、肩の動きが制限され始める時期。
2.慢性期(硬直と痛みの持続)
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- 痛みはやや軽減するが、肩の硬直と運動制限が強くなる時期。
3.回復期(可動域の回復)
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- 痛みが徐々に和らぎ、肩の動きが徐々に回復していく時期。
肩関節周囲炎の主な原因
1.加齢
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- 自然な老化現象: 年齢を重ねると、肩の関節や周囲の組織が摩耗しやすくなり、炎症を引き起こすことがあります。特に40歳以上の人に多く見られます。
2.過度の使用
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- 反復動作: 肩を酷使する反復的な動作が続くと、肩の筋肉や腱、関節にストレスがかかり、炎症を引き起こすことがあります。例として、重い物を持ち上げる、手を頻繁に使う作業などが挙げられます。
3.外傷
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- 怪我や外傷: 肩を打ったり、捻挫したりすることで、肩関節やその周囲の組織が損傷し、その結果炎症が起こることがあります。
- 手術後の合併症: 肩の手術を受けた後に、肩関節周囲炎が発症することもあります。
4.運動不足
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- 肩の動きの欠如: 長期間にわたる運動不足や、肩を動かさない状態が続くと、関節が硬くなり、炎症が生じやすくなります。例えば、デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けることが原因になることがあります。
5.その他の健康状態
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- 糖尿病: 糖尿病患者は肩関節周囲炎のリスクが高くなる傾向があります。血糖コントロールが不十分な場合、体内の炎症反応が増加することがあります。
- 甲状腺機能異常: 甲状腺の問題も肩関節周囲炎の発症リスクを高めることがあります。
肩関節周囲炎の治療法
1.薬物療法
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- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs): 痛みと炎症を軽減するために使用されます。市販薬(例:イブプロフェン、ナプロキセン)や処方薬があります。
- 鎮痛剤: 痛みを和らげるために使用される場合があります。
- ステロイド注射: 炎症と痛みを迅速に軽減するために、肩関節内にステロイドを注射することがあります。
2.理学療法
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- ストレッチ: 肩の可動域を広げるためのストレッチが行われます。専門の理学療法士が指導することが多いです。
- 運動療法: 筋力を維持し、肩の動きを改善するためのエクササイズが含まれます。
- 温熱療法: 温めることで血行を良くし、筋肉の緊張を和らげることができます。
3.物理療法
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- 超音波療法: 超音波を使って肩の深部組織を温め、痛みと炎症を軽減します。
- 電気刺激療法: 肩の筋肉に微弱な電流を流し、痛みを和らげ、筋肉の緊張を緩和します。
4.外科的治療
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- 関節鏡視下手術: 他の治療法が効果を示さない場合、関節鏡を用いた手術が行われることがあります。肩関節周囲の癒着を取り除き、可動域を改善します。
- マニュピレーション: 全身麻酔下で肩を強制的に動かし、癒着を破壊する方法です。
5.生活習慣の改善
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- 適度な運動: 肩を動かすことが痛みを悪化させない範囲で、日常的に行うことが推奨されます。
- 姿勢の改善: 姿勢を正しく保つことで、肩にかかる負担を軽減します。
- 栄養管理: 炎症を抑えるためにバランスの取れた食事を心がけることも大切です。
自宅でのケア
- 冷却療法: 初期の炎症や痛みが強い場合は、冷やすことが効果的です。氷を使ったアイスパックを肩に当て、20分程度冷やします。
- 温熱療法: 痛みが軽減した後は、温めることで血行を促進し、筋肉の緊張を緩和します。温湿布や温めたタオルを使用します。
まとめ
肩関節周囲炎は自然に治癒することが多いですが、治療を受けることで回復を早め、痛みを軽減することができます。早期に診断を受け、適切な治療を開始することが重要です。また、肩関節周囲炎の治療は、長期にわたることも多く、継続的なケアが重要です。また、自己判断で無理な運動を行わないように注意してください。解らないこと、ご質問等ありましたら、お気軽にご相談ください。